第3章 覚醒をはじめた証
「餓鬼とは思わんさ。いい女になった。
まぁ、可愛い妹には代わりないがな。
マルコもイゾウもサッチもお前に鎧のごとくベッタリだからなかなかじっくり話さんだろ。
せっかく妹が帰ってきたというのに話せんままは勿体ないと思ってな。」
そう言いながら、私と同じように空を見上げては髭を弄びはじめた。
「ユリが商船に乗るって聞いたときは驚いた。
てっきり反対押しきって一人で冒険でもすんのかって思ったぜ。
シャクヤクが勧めたって話だがどういう風の吹き回しだ?」
ここの隊長達にも以前から一人で旅をしてみたいとはぼやいたことがあった。
その思いの土台が
父上の最後の手紙にあった"自由に生き、旅をし、様々なものに触れよ"という言葉。
それと父さんの"大人になって違う船を選んでも構わねぇ。
この残酷な広い海の中でお前たちを守り、その行く末を見届けたい"という思い。
そして自由な思考を育ててくれた父様と母様だった。
それは赤髪海賊団の方も白髭海賊団の方も理解しているし、何の懸念もなく自由に選択できる環境を整えてくれたんだ。
「勿論はじめはそうするつもりだったの。
兄上が海賊って言う道を選んだから、海賊って視点以外からも世界を見てみたかったの。
ボルさん達がいい人でシャンクスのところでもここでも、私の大事な人たちの事を良くしてくれるでしょ?
だから力になりたいと思ったし、咲に乗っていろんな所に行かせてもらえるからそう決めたの。」
兄上が自由に旅をするシャンクスの船で海賊として生きるなら、私は違う何かを探していた。
冒険をしたいと一人で思っていたのはその何かを探すためだったわけで、商人や医者、もしくは情報屋どれでもいいって思っていた。
海軍と海軍の味方になるのは嫌だったけど。
でも、ボルさん達に出会って話をして、私の家族や仲間と快く接してくれて
母様からボルさん達が私に来て欲しいって言ってくれた瞬間から
期限付きな私だからこそ、それまでに何が私にできるかを試しながら模索することで力になれると思ったんだ。
「あぁ。でも、俺たちに良くしてくれるのは、ユリの人柄がそうさせたんだろ。
俺らが皆ユリの事悪く言うやつはいないしな。
単なる容姿だけじゃないのはよく関わってきた奴ほど解ってる。」