第3章 覚醒をはじめた証
ジエゴさんに別れを告げて家を出た。
帰る頃は空は真っ赤に染まって日没前。
過保護の兄二人はまた私の手を引いてモビーに戻る。
その手の暖かさに安心感さえ感じてしまう。
ここが家なんだと思ってしまうほど。
もちろん兄上とシャンクスと居るときもそういうことを考えるけど、赤髪海賊団は"仲間"としての心地よさ、白髭海賊団は"家族"という心地よさ。
そしてこれから暫くはディルバリーが私が生きていく場所となる。
海賊とはいえ、正直私は幸せで恵まれている方だ。
屈強な男達に守られて修行させて貰って、いろんな事を教えて貰って、大事にされて。
そんなことを思ったら、二人の手を手繰り寄せて腕を組んだ。
「どうした?」
「ううん。幸せだなぁと思って。」
「なんだそりゃ。」
それでも笑いかけてくれて嬉しい。
「渡したいのがあるから、どこか行く予定でも一旦モビーまでいっしょに来てね?」
「言われなくてもモビーまでは行くさ。」
「俺は専らデスクワークだよい。」
そしてモビーへ向かった。
モビーに帰ると食堂まで行って夕食をとりながらプレゼントを渡すと、必要なものとか好みとか合ってたみたいで喜んで貰えた。
その後、イゾウは夜の街にマルコは自室に。
そして、私はサッチ兄さんにカクテル作って貰って一人で夕涼み。
何にも考えずただ満点の空を眺めていると気持ちがいい。
みんなが見守ってくれるこの場所で。
「一人でこんなところで飲んでたらマルコもイゾウも心配するんじゃないか?」
「ビスタ!どうしたの?」
ワインのグラス片手に渋い笑顔でそこいいか?って言われたので並んで座る。
「酒は強いんだろ?いい酒拝借してきたから、付き合え。」
ゴツンと音を立ててワインボトルを置くと持っていたグラスに入っている分を飲み干す。
「いいの?こんなガキんちょと飲んでて。」
いつも孤高で紳士的な雰囲気を醸し出しているこの人は賑やかな場ではいつもそれを眺めて楽しんでるような人。
もっと落ち着いた雰囲気の人と一緒に飲むのが好きそう。
そう思っていってみた。