第3章 覚醒をはじめた証
昼食を摂った後、このレストラン近くでいい店を見つけたので化粧直しに行くと言って二人と離れた。
そこで万年筆とインクのセット、お香の伽羅(キャラ)を購入して戻ろうとしたときだった。
路地裏で不振な物音を耳にして立ち止まる。
「ちょっといい加減離してください。」
「いいからちょっと付き合え。」
中年の男が若い女の人を捕まえて連れていこうとしている。
典型的なパターン過ぎて思わず笑いそうになるが、堪えて様子を伺う。
グルになって物盗りしている輩もいるからだ。
根拠は私が来て突然声がしたから。
まぁ、物取りに突っかかったところで取られるようなヘマはしない。
仮に物盗りだとしても父さんの縄張りでやってること事態許せない。
少し様子を見守ったが他にも誰かいるようだ。そいつらと私を見たりしている節がある。
答えは黒。
騙されたかのように装って彼らに近付く。
同時にまわりの気配も動き出した。
「何をされてるんですか?」
すると男がニヤリと気持ち悪い笑みを浮かべた。
「その子を離しなさい。」
「へぇ、あんたかなりの上物だなぁ?やんのか?金持ちのオッサン共に売ったら良い値段になりそうだ。」
「あんたくらい雑作もない。虫けらのように潰せるよ?さぁ、どうする?」
呆れて思わず見下してしまう。
「ん?やんのか?」
男が合図すると5人くらいの男が降りてきた。
「人拐いなら、まず"兄さん達"に見せないといけないかな?」
「何を言ってやがる。野郎共そいつを捕まえろ!!」
拳や蹴りをスルリと交わし、手刀と鳩尾に拳を入れる。
後ろで大きな気配がしたので振り向きながら回し蹴りをお見舞いしてやった。
男達が動かなくなったとき若い女の人の姿もなく、一応身の回りの物を確認したが何も盗られてないようで安心して手を叩いた。
「遅いと思ったらこんなところで油売ってたのかよい。」
振り向くとマルコとイゾウが通から見ていて、私を見て笑いかけていた。
「この人達どうしよう?」
「ほっとけ。次やらかしたら俺たちが始末するよ。」
イゾウの言う通りにしたかったが、通りがかった人の事も考えて端に座らせるように寄せようとすると、呆れたように溜め息をつかれながらも手伝ってくれたのだった。