第3章 覚醒をはじめた証
「姫。入るぞ。」
イゾウの声がしてドアを開ける。
「どうぞ?」
ドアを開ければ出掛ける支度を済ませたイゾウ。
「今日俺も、マルコについて行くことになったからな。いいだろ?」
「勿論。次にいつ兄さんたちと出掛けられるのか解んないし。」
「そうだな。赤髪から貰ったの見せてみ?」
「へ?」
何で知ってるのとポカンとしてたら小突かれた。
「昨日のこと見ちまったから、マルコに聞いちまったよ。
姫はもうアイツの気持ち気づいてるんだろ?」
イゾウの観察力も、洞察力も、行動力も私や私に関する関する周囲の変化に対しては特に秀逸だ。
親というべきか、家臣や秘書ってレベル。
気づいたけどうまく距離をとれないのは、研修に出掛ける5年前まで"近くにいる仲の良い従兄レベル"で会いに来ては勉強から修行、そして遊んで貰ってたから。
勉強や修行は私とマルコの一対一になることが多かった分、家族以外で他の兄弟より一番一緒にいたのがマルコだったしよく可愛がってもらってた。
でも、私には師匠でよく面倒を見てくれた大好きな"義兄"でとまってる。
俯いて言葉を選んでいるとイゾウは続けた。
「それに応えられねぇんなら少しは距離を置け。
特に部屋に入るときは、どんなに遅かろうが俺やサッチを使え。
同じ船の上で何かしらやらかしてギクシャクして貰ったんじゃぁ、勝てる戦も勝てやしない。」
ピシャリと言いきられて少し落ち込む。もう今までどおりにしてたらイゾウに心配かける。
イゾウのいう通りだ。マルコはこの船ではNo.2。
そして、自惚れとかじゃない、普通の人から見ても私を好きでいてくれる人はかなり多い。
中途半端で今のまま幼い頃からの気分で皆と接していたら私ごときで大波乱が起きたら元も子もない。
「イゾウのいう通りね。ごめんなさい。」
無表情から少し優しい笑みに変わって私の頭を撫でた。
「あぁ。解ったらいいさ。.......ほら、赤髪から貰ったの見せなよ。
なぁに、今回オーダーするやつの参考にするだけさ。ここは職人の街だからねぇ。」
そう言われると、イゾウが差し出した手にシャンクスからのペンダントを置いた。