第3章 覚醒をはじめた証
「何か落ちてるよい?」
シーツにチェーンだけ見えたそれはポケットに忍ばせていたシャンクスのジョリーロジャーをモチーフにしたトップがあしらわれたもの。
ここでは不謹慎だと思って外してポケットに入れていた。
気づいたときは手遅れで、マルコはそれを持って眺めていた。
「赤髪とデキたのかよい。」
明らかに不機嫌そうに言うマルコ。別にやましい理由で隠して持っていたんじゃない。
というよりやましいという間柄ではない。
心配させると思って言わないでおくと決めてたシャボンディー諸島での人拐い事件の事を話し、その流れで持ってろと言われたことを話すと少しは納得してくれた。
「よし決めた。今日は街に出るぞ。」
「へ?」
「守ってやんのが彼奴だけだって思われるのは癪だってんだよい。
お前は白髭海賊団全員の妹だ。
赤髪と義兄弟なら俺たちともそうだろい?」
あれ、マルコってこんな人だったっけ?こんなに単純な人だと思わなくて可愛いなと思ってしまった。
でも、考えてることはわかる。
受けた恩は別の恩として送ればいい。
私ができる範囲で。
「久しぶりに兄さんと出歩くのなら嬉しい。今日はディルバリーに行く予定ないから。」
そう笑って言うと、優しい眼差しを向けられて頭を撫でられた。
昨日はお風呂に入らずに寝てしまったので部屋に帰りお風呂と身支度を済ませてから笛を吹くため甲板へ出る。
甲板ではイゾウが煙管をふかして薄霧がかった海を見ていた。
「おはようさん。相変わらず早いねぇ。」
「おはよう。もう体に染み付いた習慣だから、どんなに遅く寝ても決まった時間に目が覚めるの。」
「ここで聞いててもいいかい?」
「勿論。」
ユリは船縁に胡座をかいて座って朝霧の海に笛の音を響かせ、
イゾウは何かを思いながら遠い空を仰いでそれを聞いていた。