第3章 覚醒をはじめた証
「他のところで寝たら襲われかねねぇよい。ったく。」
と言いつつも、久しぶりに見た無防備な寝顔が自分しか見てねぇことに得体の知れない優越感を覚えた。
「俺も大概なアホだよい。」
俺の部屋から紅條兄妹の部屋は結構遠い。10部屋行って上の階に行って2階の最奥。
何となくこっ恥ずかしいし、絶対冷やかされる。
特にこんな大人の女になってしまったら尚更だ。
でも、見張り番以外は誰も彷徨いていない時間。
ん?
あ、しまった。こいつの部屋の鍵持ってねぇよい。
さて..........戻るしかねぇか。
相変わらず何の気も知らねぇで腕の中に収まって寝てるユリが可愛い。
でも、妹で弟子だ。
傷つけるようなことはしない。
そう腹を括って部屋で寝かせてやることにした。
部屋に入ってからベッドに寝かそうとするが、ユリの手が俺の服をしっかり握ってて離れない。
どうにか体を駆使して服を脱ごうとしてみたり手を離させようとするが上手くいかない。
ん?
ふとユリの顔を見ると綺麗な涙が頬を伝って流れていった。
泣いてんのか?
嫌な夢でも見てるのか?
なんか思い出して見てんのか?
「うぅ....。」
また反対側の目から涙が溢れて、何だか手をほどく行為がいけねぇような気がして、そのままユリと布団に入った。
「何かよく解らねぇけど、そんな顔するなぃ。
ここにはお前を悲しませるような奴はいねぇよい。
いても俺が守ってやるから安心しろぃ。」
寝ながら涙が止まらねぇユリの頭や背中を撫でながらいつの間にか俺も眠りについていた。