第3章 覚醒をはじめた証
「ユリ、俺は能力に関するこたぁ全部は知らねぇ。だがな、ふたつ気を付けておけ。
お前は、冬島には一人で行かねぇ方がいい。
力を酷使した後も一人になるな。これは古株の息子たちもよくわかってるが、
雪女の魂が宿った女は冷体温症と言って自分の体が熱を発しなくなる病にかかる。
予兆として手足の先から徐々に冷たくなってくるが、苦痛なく意識を失う。
状況にもよるが意識を失って半日以内で誰かが気付いて手当てを受けなければ凍死するぞ。」
え?
余命宣告されている気分ってこんなことなのかなぁ?
背中がゾクリとした。
「親父、もしユリがそうなったらどうしたらいい?」
戸惑って硬直している私に変わってイゾウが聞き出す。
「体温が回復するまで温め続けるしかねぇらしいが、
詳しくはマルコに聞け。
白菊が使ってた保温機がまだ医務室の倉庫にあるかもしれん。ナースに手配させておく。
娘がいつでも帰ってきやすいようにな。」
グララララと静かに笑う父さんは、
私の様子を見て気遣うように言ってくれた。
「ユリ。あんまり考えすぎるな。風邪のようなもんだ。
それにお前にはどんな時でもついてきてくれる相棒ができたじゃねぇか。」
安心させるように大きな手で私の頭を撫でると、
「ボルとエリにも言っときな。お前の家はこれからそこになるんだからな。」
そういうと、日に当たりに行くと言って部屋を出ていった。
何となくわかったこと。
白菊様は万国で生きていて、半分裏切ったように出ていった形になってしまったから彼女も帰ってきたり連絡できないでいること。
そして、マルコの気持ちを知っていた当時を知る兄弟は暗黙の了解でその話をしたがらないこと。
そして、私が強大な力を得る代わりに、死にやすい状況に陥りやすくなっているということ。
そのために咲に出会ったんだと思った。