第3章 覚醒をはじめた証
食事が終わって、イゾウと共に父さんの部屋まで来た。
「二人で来たのか。二人ともそこに座れ。」
そう促されて父さんはベッドに腰掛け、私とイゾウは脇にある椅子を引っ張ってきて座った。
「おおかた何が聞きてぇかわかってる。ユリの新しい力と、白菊のことだろ?」
「はい。つい最近からどんどん攻撃力が上がると共に顔が変わってきているような変な感覚があるんです。
しかも、こっちに来てから白菊という名前をよく耳にします。」
「俺は、姫の事を知っておく必要がある。マルコやサッチは何も語らねぇ。
その理由も本当は本人から聞きたいが、この機会に聞かせて欲しい。」
父さんは腕組をして過去を思い出すように目を閉じた。
暫くの沈黙の後、再び目を開けて私たち二人を見つめると、ゆっくりと口を開いた。
「あぁ。わかった。
簡単に言えばなぁユリ。
お前の新しい能力の実態は
雪女といわれる妖怪の魂が引き継がれ、それが開花してきたものだ。
そして、ユリ達がこの船に始めて乗った時の少し前までこの船を拠点に一人で新世界の国々を守った女。それが白菊だ。」
そんな話は聞いたこともない。
ただ、同じ面で顔を隠した手配書があることは随分昔に見たことがあった。
そして、なぜか咲に出会った後、雑貨の店でこの白い無地の不思議な面を見かけ、惹かれるものがあって買った。
それも運命なのか.......。
「それほどの事をしたのになぜ、噂とも伝説ともなってないのでしょう?」
「政府の輩がその功績を全部自分のものにしやがったからだ。そして民衆にも公に物言えぬ雰囲気にした。
あいつはそれでも、英雄にされるよりはマシだと言って笑ってたがな。
あいつはもともとワノ国でロジャーの船に乗った海賊だ。
ロジャーが処刑された後、海賊が急激に増えてその分被害に合う国や島が続出した。
あいつは大海賊時代によって政府が慌てふためくことは望んでも、一般市民の惨状を見ていられなかったんだろうな。
こっちの海ではビッグマムが海賊に襲われて取引が出来なくなった所を叩き潰していってたが、あいつはそんなところまで手を出してたった一人で守っていたんだ。本当に危ない時はうちからも連れていってたがな。」