第3章 覚醒をはじめた証
「ユリそろそろあっちで一緒に食おうぜぃ!」
促されるままサッチ兄さんの後をついていくと、イゾウとマルコがカウンターで手招きをした。
「おはようさん。今日は何か凝った料理だと思ったら姫も一緒に作ってたのかい?」
「お口に合うかしら?
一人で作るより大勢で作る方が楽しいし、こっちに来たらそれも楽しみのひとつでもあるの。」
座れと促されてマルコの横に座り、サッチが兄さんがマルコと反対側の隣に座った。
「ユリも働き者だねぃ!美味いよぃ!」
朝はあまり食べないはずのマルコのトレイには数種類の私が担当した料理がのっていた。
しかも他の人が作った料理は並んでいない。
何にも言わなかったのに気づいてくれたのかと思うと胸に暖かさを感じた。
「ありがとう!」
「昼は俺に任せてくれよ!
ユリちゃんスペシャルサッチ様ランチ作っちまうぞ!!」
「ネーミングセンスないけどサッチ兄さんのご飯は美味しいよ?」
「さらっと言うなぁ....さらっと。でも最後の嬉しい。嫁さんになるかい?」
「遠慮しときます。」
あからさまに落ち込んで見せるサッチ兄さん。
それを面白そうに見て笑う。
「可愛い姫をサッチなんぞに渡すもんか。諦めな。」
「なんだそりゃ、その言い方だとイゾウがユリの男みてぇじゃねぇかよい。」
コーヒーを飲み干して呆れ顔でマルコが言う。
「いいや、俺は至って今でも家臣のつもりさね。そうだろ?ユリ」
「私は知りませーん。」
どうでもいいという感じで受け流しながら、サラダのトマトを口に運んだ。
表情ではポーカーフェイスでも、そのやりとりが久しぶりで笑いを堪えてたのは内緒。
「イゾウ、あとで父さんのところ一緒に来てくれる?」
「あぁ。昨日のあれかい?付いていくよ。」
マルコとサッチ兄さんは一瞬顔を見合わせたけど、また普段の顔で食事に戻った。