第3章 覚醒をはじめた証
翌朝、恐らく見張り番を除いて早く起きたユリは、日課の笛を吹き終わると食堂へ向かう。
すると、サッチが先にその部屋に来ていて、何かを書いていた。
「おはようございます。
サッチ兄さんは今でも朝早いのね。部下よりも早いなんて流石は白髭海賊団の隊長さん」
「おはようさん!朝から嬉しいこと言ってくれるなぁ。
俺はただみんながガツガツ食ってくれるのが嬉しくてできるだけ自分でやれることはやりたいんだよ。」
にこやかに話すサッチは、彼の言うようにいつも調理場に立っているときはどんなにドタバタ忙しい局面でも楽しそうにしている。
ユリはサッチのそういうところを、凄く尊敬していた。
「何してらっしゃるの?」
と、覗き込むと沢山のレシピノートが置いてあって、それを読んでいる最中だったようだ。
「はは!イゾウがよぉ、ユリちゃんが帰ってくるから和食出してやれって言うもんだからいろいろ調べてノートに書き込んでたのさ。
でも、和食って素材生かして調理するもんだろ?
腕がなるなぁって思って見てたら楽しいの何の。」
「そうなんだ。ありがとう!」
そんな話してくれてたのを知ると素直にうれしい。
「しかし、ユリちゃんも朝早いの継続してやってんだな。
あ、昨日の笛も躍りも格別だったぜ!」
そう言って立ち上がると、コーヒーを淹れてくれた。
「俺は戦闘と料理だけだからなぁ。ユリちゃんやイゾウがとってもかっこ良く見えるのさ。
しかも、ユリちゃんは料理もできちまうだろ?
それにすげー医者だし。なんか欠点とか出来ないこととかないのかよ?」
是非知りたいと言わんばかりに身を乗り出して、私の顔を覗き込んできた。
歳が離れていてもこのしぐさはかわいいと思った。
え?欠点かぁ.....。
「そんな、サッチ兄さんが言うのは特技が多いことでしょ?それは特技が多いって一括りにしてしまえばそれまでよ。
あとは至って普通よ?
それにサッチ兄さん程の料理の腕は私にはないし、医術も私と違う分野で凄いのいたんだから。」
「謙遜なところもいいと思うぜ?俺からしちゃぁ、完璧さ!」
大きくてゴツい掌でぐしゃっと頭を撫でられると何だか子供に戻った気持ちになった。