第3章 覚醒をはじめた証
夜もふけて来る頃になると、酒に弱いものからどんどん潰れてしまい、とうとうお開き。
まだ、意識、足取りがしっかりしているものが助け合って、酔い潰れて寝てしまった兄弟をそれぞれの部屋に運んでいた。
4番隊は片付けに入りそれぞれまた戦場のように騒がしい。
そんな中、父さんが自室に入ろうとするのを呼び止めた。
「父さん。明日の朝時間あるかしら?イゾウとききたいことがあるのですが.....。」
「あぁ。いいぞ。おおよそ検討はついてるが、赤髪は何も言わなかったのか?」
「えぇ。何も。」
「そうか....。わかった。じゃぁ、今日はゆっくりと寝ろ。ちゃんと鍵はしろよ。」
というと、私の頭を大きな手のひらで撫でて戻っていった。
「随分と大盛況だったなぁ。お嬢さんよぉ!」
振り替えると、歯が欠けている大男がニコニコして話しかけてきた。
その声にヒヤリと背筋が凍るような感じに戸惑う。
「えーっと、あなたは確か.....。」
「おっと、忘れっちまったかい?俺は2番隊んとこのティーチだ。今度は忘れないでくれよ!」
敵意のない話し方に表情。でも、どこかで不安を感じたこの男は、一番最初にユリたち兄妹が乗船したときにマルコの指示で船長室に運んだ男の一人でそれ以来接点はなかった。
しかし、敵襲の度にそれなりの力を見せ相手を倒してきた実績もありながら、全ての昇進話を笑顔でありながら頑なに拒んでいたという話を以前マルコとの雑談の中で聞いたことがある。
近づかない、深入りしないよう適度な距離をとった方がいい男だと確信した。
「えぇ覚えておきます。」
「しかし、あの頃あんなに小さかったってのに、随分成長してしまうもんだなぁ。
マルコ隊長もメロメロになるわけだ!ゼハハハハ!」
下品な笑いかたにしかめ面になるのを堪えながら、作った笑顔を向ける。
「マルコ兄さんの気持ちは知りませんけどね。では、もう遅いので明日お会いしましょう?」
「ゼハハハハ。あぁ、そうだな。
深酒と寝不足はいい女の敵だ。じゃぁ、しっかり寝ろよ!」
というと、また下品な笑い声をあげて沢山の船員の部屋がある通路へと曲がっていった。