第3章 覚醒をはじめた証
この船でもユリを鼻の下伸ばして見る男たちばかり。
この船ではマルコとイゾウがその視線から守る役割を担っている。
それでも、ユリに酌を求めてきた兄弟には応えていて、酌を受けた兄弟は持ち場に戻れば共に酒を飲んでいた者からバシバシと背中を叩かれ歓迎されていた。
なかなか、酌を待つ列が絶えないこともあり、しかも、戦場のように煩い宴。
流石にユリにも少し疲労が見え隠れしたとき、
「おいおい、そろそろうちの妹兼アイドルのお酌会はお開きだ。
とっとと自分のところに戻って飲めよい。」
一斉にブーイングが上がり、さらに煩くなる。
マルコはため息を一つ吐いて続けた。
「そんな一斉に来られたって、ユリも疲れるだろぃ。
優しい奴だからってあんまり付け上がんなよい。」
と嗜めるとしーんなり、バツが悪そうにそれぞれの場所に戻っていく。
「モテる女は困ったもんだなぁ。ユリ。グララララ」
父さんがそういうと、イゾウもサッチも他の隊長もマルコに対してニヤニヤと笑いだした。
そう。マルコはユリに他の兄弟が酌を求めてくるのを実に面白くなさそうに見ていて、絶妙なタイミングでさっきのような事を言ったのだ。
マルコは何の事だよいという始末。どうやら自覚なしのようだ。
白髭は、マルコが白菊とユリを重てしまわないように葛藤しながら、どうにかユリに今まで通りに接するようにしているのを既に悟っていた。
ユリも、マルコがシャンクスと同じように、自分を誰かと重て見ていることには気づいていた。
その人物が“白菊”ということに薄々気づいていたし、その女性に対しての興味もわいてきていた。
ばか騒ぎの中で、いつものように振る舞うユリだったがいろいろ気になることばかりで話した内容は頭に入っていなかった。