第3章 覚醒をはじめた証
4曲披露したあと、ディルバリーの船から父さん用のお酒を運ぶのをイゾウに手伝ってもらって父さんや隊長達が座る席に向かった。
マルコの近くの船縁に留まっていた咲が肩に戻ってきた。
「父さん!さっき言ってた薬酒よ!
動脈硬化に滋養強壮、デトックス、老化防止の効能で父さん好みのテイストにしたから喜んで貰えると嬉しいわ!」
「娘が作った酒なら何でもうめぇ。ありがとな。
結構な量だな。ユリには重かっただろう?」
「父さんが喜ぶ量じゃないと意味ないと思って。」
「相変わらず、気の利く娘だ。さぁ、ユリも飲め!」
グラララと機嫌良さそうに笑う父さんはいつもより楽しそうだ。
「お疲れさんよい。二人とも!!ユリは一先ずここに座れ。」
少しお酒が回ってきたらしいマルコは上機嫌。でも、マルコにしては少しペースが早すぎるような気がした。
「飲みすぎじゃない?どうしたの?」
「まぁまぁ、愛弟子がいい女になって帰ってきたのがすんげー嬉しいんだとよ!なぁ、マルコ!」
「煩せぇよい。フランスパン」
「んだとぉ!?パイナップル!」
口もよく回るみたいだ。
まぁまぁと宥めて、酌をするとサッチは鼻の下を伸ばしきっていた。
「サッチ兄さん!面白い顔になってるわよ。」
笑いを堪えきれず吹き出すと、釣られて回りも笑いだす。
「だらしねぇ顔だなぁ!それでよく人の事言えるもんだよい。」
「マルコー!」
ダハハハハと笑い声が大きくなると、サッチは恥ずかしさ隠しに怒鳴った。
父さんはその様子を見下ろしながら悠々と徳利を傾けて薬酒を飲んでいた。
「父さん美味しい?」
見上げるように振り向くと、満面の笑みで
「あぁ。よく研究したな。ちゃんと俺好みに仕上がってらぁ。」
と喜んでもらえたみたいだ。
「またここに来るときは仕込んでくるよ!」
「積めねぇ位持ってくるなよ?ありがとな。」