第3章 覚醒をはじめた証
甲板に出ると、ユリとすれ違う者は彼女から目を離せず、目にハートを描きながらときに鼻血を噴いて倒れるものもいた。
「姫は以前にも増して人気者じゃないか。
元紅條家の忍の跡取りとしてこんなに嬉しいことはないねぇ。」
「こんなに注目されるの、あまり好きではない。
気持ちはありがたいけれど、慣れたくはないわ。」
時々古株の兄弟の声からか白菊と言う単語がちらほら聞こえた。
そんなに似ているものなのかしら?
と疑問に思いながらも、隊長達と父さんが待つ甲板へ向かった。
もうディルバリーの船がすぐそこまで迫ってきている。
咲は肩を離れて彼らに存在を示す日のようにモビーの上を旋回しながら飛び、ユリは甲板の目立つ位置に駆け寄り袖を押さえて大きく手を降った。
「ユリちゃん!綺麗だねぇ。それはワノ国の着物かい?」
エリさんが声をかけてくれた。
流石商人。
あの鎖国国家で国の内情すら見えないという国の衣装を知っているらしい。
「すいません。先に着替えてきちゃって。
ボルさん、エリさん。こちらのみんなも私を育ててくれた大事な家族です。」
「娘が世話になるらしいな。出来の良い娘だがちょっとばかり抜けたところもある。
だが、こいつも俺にとっちゃぁ可愛い娘だ。
迷惑かかるかもしれんがよろしく頼んだぞ。」
「これはこれは!勿論でございます。手前共こそこの子にお世話になるわけです。会社と共に成長できましたらと願っております。」
世界最強と言われる男を目の前にして、さすがのボルさんも、圧倒され緊張しているようだった。
「こちらのみなさんも、お酒を好まれるんでしょ?
魚人島で白髭さんたちが好まれるお酒を調達しましたのでどうぞ、今度の宴会の足しにしてください。」
太っ腹なボルさんでも、16艦隊もある大所帯な白髭海賊団全員に渡るような量のお酒は船に積みきれず用意しきれなかったようだった。
それでも大樽100個ものお酒を持ってきたのは天晴れと言わざるを得ない。
「大所帯なのにすまねぇなぁ。今夜早速、娘のための宴に使わせてもらうぞ。
お前たちも混じれ。娘に対しての礼でもてなしたい。」
ボルさんの返事を待たずに雄叫びを上げ始めたのに圧倒され、有り難うございますと頭を下げた。