第3章 覚醒をはじめた証
着付けは帯だけイゾウに手伝ってもらったくらいで後はすんなり着れた。
「なんか、こういうの着ると母上の顔に似てきたなぁって思う筈なのに、父の顔にすらあんまり似ていないような気がするの。
特にこの数日間で自分の姿や力に違和感を感じるの。
最近この二つの刀の威力が急に上がったし....。
イゾウ、母上か父上から何も聞いてない?」
姿勢を変えながら鏡に写った自分の顔をしげしげと眺め
「聞いちゃいないが、他の兄弟たちが姫の新聞の写真を見て一様に『白菊に似ている』って言うんだよ。
親父なら何か知ってるはずさ。後で聞いてみると良い。」
白菊と言う名前は初めて聞く。イゾウですら知らないのだ。
何か出生に関することなのかと思ったが、それにしては父上の血を確実に引いているからこそ見れる予知夢は見れるのだ。
「あぁ、念のために言っておくが、姫は間違いなく義久様と桜様の実子だよ。
俺も、ヨシタカ様も桜様が産気付いて姫が生まれて会うところまで、屋敷にいたんだ。」
「そうね。でなければ予知夢は見れなかったはずだもの。」
イゾウがそこまで言ってくれるのなら私の特異体質に関連するものかと思ったが、それでも“白菊”と言う女性の名前が気になった。
「父さんに後で聞いてみるわ。そろそろ、ディルバリーのみんなも来てると思うから表に出なきゃね。」
「親父とそれについて話すときは俺も呼んでくれるかい?姫の事は聞いておくべきだと思うんだ。」
「わかった。ありがとう。
そういえば、あと一着はどんなものかしら?」
「俺の趣味さ。ここを出る前の宴の前に見せるよ。」
「嫌な予感がするのは気のせいかしら?」
そう言うと、フフンと意地悪そうな笑みを浮かべ目を反らした。
「いいわ。明日見て着るか着ないか決めるから。」
「絵柄は姫の好みだと思うから着てもらわなきゃな。
おっと、そろそろ甲板に出てみるか。
ほら、行くぞ。」
と押しきられ、イゾウに背を押されながら部屋を後にした。