第2章 葬式
「でもあんなことになっちゃって、教会を出て行かなくちゃならなくなって……あの時はほんとに迷惑かけたな。一度も怒らないで見送ってくれたの、まだ昨日のことみたいに思い出せるのに……」
昴は雪男と同じく、史上最年少の13歳で祓魔師の試験に合格した優秀な手騎士兼騎士(ナイト)だった。雪男と並んで天才と称され、将来は聖騎士も夢ではないと大人達からもてはやされていたのだ。
ある「事件」を起こして審問にかけられ、すべての称号(マイスター)を剥奪されるまでは。
「私は燐を守る役目を放棄した。そういう意味では藤本神父を殺したのは私だとも言えるだろうね」
「そんな、やめてください! 昴さんは何も悪くない!!」
遠い目をした昴のその呟きに、耐えられなくなって雪男は叫んだ。彼女はいつもこうやって自分を責める。慰めや同情の言葉を欲しているわけではない。純粋に、何の他意もなく、自分がすべて悪いと思いこんでいるのだ。だからまるで明日の天気のことを語るような調子で、神父を殺したのは自分だとのたまってしまう。平気でその重すぎる責務を自分だけで背負おうとしてしまう。
雪男や燐と兄弟のようにして育ったはずなのに、学園には少なからず友人もいるはずなのに、昴はいつも独りで生きているようだ。そういう、野生動物のような、一生かかっても心から分かり合うことはできないような、手のかからなさが雪男は嫌いだった。