第1章 そこからはじまる/天喰(裏)
私は、それでいい。彼に多少なりとも好意を抱いていることは確かだ。ただそれを伝えようとも思っていない、ただそれだけのこと。この子は未成年、というかまだ高校生だしなあ。
けれどこの状況を利用して彼と体を重ねるのも悪くないなんて、邪な考えを抱えて。合意の上なら、いい、よね……?
「天喰くんが楽になるなら、私はいいよ」
「っ!」
目の前の天喰くんの頬に手を伸ばして触れながら伝えれば、見開かれる瞳と赤みを増す顔。天喰くんが楽になるために私を利用してくれて構わない。私はそれでも嬉しい。
「駄目、です……今なら、まだ、…っ早く、離れて……」
押さえつけている触手の力が緩められて、天喰くんの指が私と同じヒトのそれに戻った。
「あー、ごめん、私なんかが相手じゃ嫌よね」
「っそ!……、そうじゃない、が」
瞳を逸らしながら、私を拒絶するように体が離れていく。少しばかりそれを寂しく思いながら視線を下ろせば、離れたことによって怒張する雄が彼の服を押し上げているのが目に入った。ああ、もうこれはどうにかしてあげたい、そう考えると同時に個性を発動してこの空間を隔離する。これで邪魔は入らない。
「ここ、こんなに辛そうにして。嫌じゃないのなら、ね?」
「、っは、」
主張するそこを服越しに撫であげればふるふると震えながら切なげな声を漏らした。私とするのが嫌だとしても、せめて一度出させてあげて楽にしてあげようとファスナーに手をかけた時だった。
「んんっ!?」
またも蛸を再現した指によってベッドへと縫い付けられたと思ったと同時に乱暴に重ねられる唇。どこかたどたどしく口内を蹂躙する舌にこちらも舌を絡めれば更に深く貪るように口内を蠢く。上顎を舌先でなぞられてぞわりと体が粟立った。
「ふ、っ、…」
「すみません、もう、止められない……」
「え、……っあ、あああ♡!」
唇を離されて酸素を求めるために開けた口から漏れたのははしたない声。それもこれも天喰くんが器用にその触手のような蛸足を私の胸と秘部に這わせているからだ。キスをしているうちにすっかり剥ぎ取られてしまった衣服が天喰くんの服と一緒に散らばっていた。