第21章 ロマンスに憧れて
「あら、水分ちゃん」
「ミッドナイト先生」
湯気のこもる浴場を後にして廊下を歩いていたらミッドナイト先生に遭遇した。
「イレイザーとすっぱ抜かれたんですって?」
「耳が早いことで……」
まだ報道されていないのになあ、校長から少し話が言っているのかもしれないな、と思いつつさすがはミッドナイト先生、この手の話に食い付きがいいな、なんて思う。
「本当なの?あなた達、確かによく二人で食事に行ってるのは知ってるけど……」
ほかの先生方からすれば、ただの上司と部下、それ以上のなにかがあるとは思っていないはず。だからこそ聞いてくるのだろう。
どう答えるべきなのか。もしここで否定すればこんなに苦しまなくて済むかもしれない。でもそうしてしまえばもう先生と個人的な時間は取れなくなるんだろう。それは、嫌だなあ。しばらく重ねてはいないが、体だけの関係でもなんだかんだで縋っていたい。
敵を騙すには味方から、だよね。
「…本当、ですよ」
悲鳴のような歓声を上げるミッドナイト先生に「これから相澤先生のところ行くので」と告げれば頬を赤く染めて行ってらっしゃいと見送られた。「お祝いよ」とワインのボトルを握らされて。
「まじか、ワイン貰っちゃった……」
ごめんなさい、ミッドナイト先生。嘘ついて、ごめんなさい。
それから私も、ごめんね。今から先生を酔わせるわ。そして抱かれるの。上手く行けばね。
今日は先生を酔わせられるだろうか。