第19章 憂き世炎上
「いえ、私の方こそ……いつも酔いつぶれてしまって」
「私が酔わなければこんな記事を書かれることは……」俯く私の頭に降ってくる手。わしゃわしゃと乱雑に撫でるその大きな手で見上げた先にある先生の表情は読めなかった。
「いや、それは別にいい……」
そう呟いて、離れる手。別にいいって、どういうこと?興味が無いから?それとも、もしかして、なんて。
私は、私はね。
「先生。私、先生と噂されるのは嫌じゃないです」
先生の正面に回って告げれば虚をつかれたような顔で私を見る。あぁ、顔が熱い。
「そうだ、いっそのこと本当にしちゃいます?」
くるりと後ろを向いて、軽いノリで言ってみる。本当になんて出来っこないのに。恥ずかしくて先生の顔なんて見れそうにない。なによりも拒絶が怖い。もう何度もされたはずなのに。怖くて、怖くて堪らないんだ。
「っなんて!冗談ですよ!」
あはは、と乾いた笑いをわざとらしく残して「一度帰宅しますので寮でまた」そう言い足早に去る。笑い飛ばすでもなんでもなく、何も言ってくれない先生が怖かった。振り返る勇気なんて、今の私にはなかった。
家に近付くとちらほら目に入るマスメディアっぽいそれら。もう今の時点で家に戻るの結構至難の業じゃない?
あー、もう、面倒臭いからいっそのこと今だけと言わず入寮しようかな。自由が減るから嫌だとか思ってたけど、もうなんか、どうでもいいや。