第6章 アネモネの首輪を繋いで
「でもそれでヤるかどうかは人次第じゃね?」
緑谷なんかは絶対無理なタイプだろ、なんて言われて想像してみたけど確かに緑谷は無理だと思った。そんな人じゃない。
「確かに」
「逆に聞くけど、女はどうなんだよ」
そう聞かれて思案する。好きでもない人と、か。考えたこともなかった。高校を卒業してからそういうことをした人はいないわけではないけれど、先生のことは忘れられないでもそれなりに好きだと思った人としかそういう関係にはならなかった。
「そうだなあ、他の人はどうかわからないけど、私は無理だなあ」
そう言えば「まー水分はそういうやつだと思ったよ」なんて言われて。
「でもまあ実際しようと思ったこともしたこともないからね、意外と平気だったりするのかも」
だって、先生ほど好きでもない人とは出来たんだから。案外誰とでもできたりしちゃうのかもしれない。尻軽とか思われても嫌だけど、そう、なのかもしれないな。
「じゃあ俺と試してみる?」
心做しウキウキした面持ちで聞いてくる上鳴にデコピンを喰らわせて、でもそれもいいかもしれないなんて考える。さすがに確かめるために大冒険はしたくないし、上鳴なら気心知れているわけだから。
「……まあこの後予定も無いし、いいよ」
「え、まじで」
「やめとく?」
「いいや、行っとく」
食い気味に答えた上鳴は「据え膳食わぬはなんとやらって言うだろ」なんて笑って。私の手を引いてホテル街へと向かっていった。