第6章 アネモネの首輪を繋いで
外観は至って普通のホテル、けれど中に入れば特有の煌びやかさがあって(ああ、本当にラブホだ)なんて他人事みたく思った。真昼間からこんなところにいるなんて。それも元クラスメイトと。
「昼間っからラブホにいるヒーローってウケるな」
「誘ったの上鳴でしょ」
「んー、でも乗ったのは水分だろ」
「まあ、ね」
二人でベッドに寝転がって他愛もない会話をしていると突然ガバリと起き上がった上鳴が私に覆いかぶさる。
熱の篭った目で射抜かれた私の身体はぞわぞわと粟立ってこの先を想像して昂っていく。なんだ、やっぱり私、誰でもいいんじゃないか、なんて至極冷静に思った。
「水分、」
少し緊張を感じさせる声が私を呼んで。腹のあたりをまさぐる手と、近付いてくる口唇。私、上鳴と……
「あ、無理だわ」
口唇が触れそうになったその時に全身の熱が引いていくのが分かって、つい口から出た。「だよなー!」なんて言ってまた隣に寝転がった上鳴に、ごめんね、と伝える。
「謝んなくていーよ。無理だと思ってたし」
天井を見つめながら「あわよくばって気持ちがなかったわけじゃねーけどな」なんて笑う上鳴。
「そこまでするほど飢えてない?」
「いーや、飢えてるね!」
そう言ってこちらを向いた上鳴がでもさ、と続ける。
「水分は友達じゃん。こんなんで気まずくなるのは嫌だから」
「……そだね」
「合コンとかなら別だぞ、こんなんマジで据え膳じゃん」
「確かに」
折角だし映画でも観てく?そう言ってベッドから降りた上鳴が「カラオケもあるしゲームまであるぜ」なんて何も無かったみたいに振る舞うから、今はこの空間を楽しんでしまおうと思った。
がさごそと色々と見ていた上鳴が「やりたかったのあるからゲームやるか」なんてコントローラを渡してきたついでに、私に聞いてくるまでは。
「んで、相澤先生とシたの?」
「は、」
受け取り損ねたコントローラがポトリと落ちた。