第6章 アネモネの首輪を繋いで
「んで?こんな賑わうショッピングモールに一人浮かない顔でどうした」
「え、」
ハンバーガーにかぶりつこうと口を開けたところで唐突に上鳴が聞いてくる。
「うそ、そんな顔してた?」
「してたしてた。じゃなきゃ声掛けねーって」
「え、酷くない?友達じゃん、何もなくても声掛けてよ」
冗談冗談、なんて笑う上鳴はきっと私の落ち込む心を引き上げようとしてくれるな、と気付いてありがたく思う。昔から人の心情を読むのには聡いやつだった。
「なに、仕事の悩み?先生ってやっぱ大変?」
「んー、大変だけど楽しいよ、みんな可愛いし」
可愛い子紹介してよ、いやいやどこの世界に可愛い教え子紹介する教師がいるよ、なんて笑い合って。
「ねえ、上鳴さん」
「何だよ急に気持ちワリィ」
「酷い」
「はいはい、改まってどうした」
「……男ってさ、好きでもない女とセックスできるもんなの」
女の子大好きな上鳴なら造作もないことかもしれないな、と思いつつもそれが男の本質かもしれないと思って参考になるかわからないけれど聞いてみたかった。私の気持ちを分かっていて、それでもそれを告げさせてくれない相澤先生が、私を抱いた理由。
上鳴はハンバーガーを放り込もうとしていた口を開けたままの状態で私を見ていて、アホ面、ってつい口にしたら怒られてしまった。
「いや、なんか、水分からそんな言葉が出ると思わなかった」
「なに、私を聖人君子だとでも思ってるの?……それで、どうなのよ」
「いや、まあ、そうだな、アレだ、勃つもんは勃つ」
「言い方ってもんがあるでしょーよ。……まあでも、そっか、そういうものなのね」
シェイクをズズッと吸って、じゃあやっぱり相澤先生もそうだったのかな、たまたま私がそこにいたから。私の気持ちが変わってなければ、って思ったのかな、なんて考える。