第6章 アネモネの首輪を繋いで
5年越しの告白はあの時と同じく告げることすらさせてもらえなかった。事実上の失恋である。それも2度目の。同じ相手に、2度の失恋。
それを身に染みるほど自覚したって、この恋は消えてはくれないけれど。更に拗らせるだけの初恋は成就も昇華も出来ずに。
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家にいたところで考えることは一つで。鬱々と一日を過ごすのも勿体なくてショッピングモールへと足を運んだ。それはいいのだが、平日でも賑わうここで特に何もすることもない。服が欲しいわけでも、映画が観たいわけでもない。喧騒に紛れて、宛もなくただ歩く。そんな私の後ろから聞き覚えのある声が耳をついた。
「あれ、水分?」
「上鳴」
「珍しいな、休み?」
「うん、体育祭だったからね。明日から通常営業」
「そうか、そういやそうだったな。テレビで観たわ」
なかなか有望な子が多いんじゃない?なんて教え子たちを褒められてくすぐったい気持ちになる。
「時間あるなら飯でも食わねえ?」
「行く行く、そろそろお昼にしようかなって思ってたところ」
何食べたい、安ければなんでもいいよ、俺も、なんて笑いあって無難にマックに決めた。