第4章 泡沫に手をのばして
相澤先生と私が話している様子を見ていた生徒達が意外そうな顔で口を開く。
「水分先生って本当に相澤先生の教え子なんですね」
「ていうか相澤先生ってそんなに喋るんですね!?」
「意外とちゃんと見ててくれてるんだ……」
「しかも褒めてる」
「ちょっと君たち相澤先生のことなんだと思ってるのよ……」
口々に勝手なことを言う生徒達に苦笑が漏れる。
「しっかり見てるわよ、大事な生徒だもの。相澤先生だけじゃなくて私もね。まだまだ新米だけど、みんなのことしっかり見ているつもりよ。君たちは未来ある卵だからね。わかったら未来を広げるためにも体育祭に向けて励みなさい。単純な順位が全てじゃない、個性を如何に使いこなして生かせるかよ」
そう生徒達に告げると元気よく返事をするものだから本当に可愛いなぁ、なんて思いながら教室をあとにする。
「少し前まで水分もあんなだったのに今じゃすっかり教師だな」
少し間を置いて「……水分は教師に向いてると思うよ」と後ろから相澤先生が声をかけて私の先を行く。
「そう、ですかねー、えへへ」
「そうやってすぐ調子に乗る」
「すみません精進しますこれからもよろしくお願いします相澤先生」
はいはい、なんて言って足早に歩く先生の後ろをちょこちょことついて回っていたら途中で会ったマイク先生に金魚のフンって言われてしまって反射的に拳藤さんに教わった手刀を喰らわせてしまった。ごめんねマイク先生。
「そういえば昨日の救助、ニュースで観たぞ。個性の応用も増えたし救助の幅も広がったな」
「あ、ありがとうございます……!ヒーローとしても教師としても、もっと頑張ります」
少し微笑んで「うん、頑張れ」そう言って頭に乗せられる手。全くこの人は、人の気も知らないで。