第4章 泡沫に手をのばして
相澤先生の衝撃の告白にショックを受けている暇なんてない。毎朝顔を合わせる度に言い知れぬ悲しさがこみ上げるけれど、そんな感傷に浸っている余裕など新米の私には無いのだ。
数日後に迫った体育祭。教師陣も準備にてんやわんやしているが、活気立つ生徒達にも圧倒される。プロにアピールするチャンスだと個性の訓練に余念のない生徒達に、私達もこんなんだったなぁ、なんて少しだけ若かりし頃に思いを馳せる。
目の前にいるこの子達は私の体育祭の結果に興味があるらしく、そわそわと寄ってきた。
「水分先生は体育祭最高何位だったんですか?」
「私はね、あまり戦闘向きな個性じゃないからなぁ。残念ながら表彰台に上がったことは無いよ」
最高で3年の時の5位、苦笑してそう答えると相澤先生が後ろから茶々を入れてくる。
「戦闘向きとかそういう問題じゃなくて個性の使い方が単調だからだろ」
近接は苦手だって言って肉弾戦は避けるし個性の応用も幅が……なんてブツブツと言い続ける先生の口撃が止まらない。
「いやー、だってほら、回復はサポート系ですし……」
「お前の個性は戦闘向きじゃないとは言わせねえぞ、使い方によるだけだ」
「うっ……」
「まあ3年の時は5位だったからな、あの面子の中じゃ頑張ったとは思うぞ」
「せ、せんせい……っ」