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【ヒロアカ】許してね、ヒヤシンス【R18】

第1章 初恋は実らない


「……久しぶりだな、水分」

「ご無沙汰してます、相澤先生」

 ああ、私はいま普通に話せているだろうか。声は上擦っていなかっただろうか。

 初恋を拗らせる自身を滑稽だ、などと思っては見るものの高鳴る鼓動を抑えることは叶わず、どくりどくりと脈打つ心臓が煩わしい。

「まさかお前が教師になるとはな。よろしく、水分先生」

「私もまさか自分がって思ってますよ。よろしくお願いします、先輩」

 そういたずらに笑って見せれば、あのころと同じように大きく無骨な手がさらりと頭を撫でた。


□□□


「癒依ちゃん!こっちこっち!」

「みんな、久しぶりー」

 母校での初仕事を終え、かつての仲間たちとの飲み会に参加した。今日の名目は私の教師就任祝いらしい。なにかにつけて集まりたいだけなのはわかっているものの、そう銘打たれると嬉しくなるものだ。

「どうだった?久しぶりの雄英は」

「いやぁ、懐かしかったねぇ。先生方も変わらないよ」

 端の方で上鳴の「俺も教師になりてー!女子高生と仲良くなりてー!」とか峰田の「女子高生とうはうは……」とか聞こえてくるけど聞こえないふりをしておこう。あ、響香がキレてる。

「相澤先生もお変わりなく?」

「そうだねー、変わらないね。……相澤先生と言えばさ、私、先生のクラスの副担任になったんだよね」

「元教え子が部下ってどんな感じなんやろ、感慨深いもんなんかなぁ?」

「どうなんだろうね、特に何も言ってなかったなぁ」

 どう思ってるのかな。私が雄英で教師になったこと。やりづらく、は、ないか。大人、だもんな。

 あの言葉の続きは、わかっていたはずだけれど。今でもそうだなんて、思いもしてないのだろう。

「……癒依ちゃん?」

「ん?何?」

「いや、上の空だったから」

「ごめーん、考え事!それよりみんなはどうなのよ!梅雨ちゃんは事務所立ち上げたんでしょ?」

 みんなの近況を聞きつつ、頭を占めるのは先生のことばかりで。

 あーあ、消化するなんていつまでも無理だなぁ。なんて、分かりきっていることを考えたりした。
 
 

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