第1章 初恋は実らない
──私、相澤先生のこと……
もう5年も前のことになる。この先に続くはずだった言葉は言わせてすら貰えなかった。完全に私の気持ちを分かっていて拒否する言葉、優しい声音だけれどそれはきっぱりと言われた。
告げようとする前から結果なんてわかりきっていたし、打ち明けてどうこうなりたいなんて気持ちはそれほど持ち合わせてもいなかった。先生が私を好きになることなんてあるはずがないと思っていたのだし、付き合うだとかいうことは一切頭になかった。……嘘、少しはあったけど。
ただ、3年間抱えてきた気持ちを吐き出したいだけだった。吐き出さないと前に進めない気がして。
結果として、吐き出させてさえもらえなかったこの恋心は悲しいかな今も胸の内から消えずにいる。少しでも近付きたくて、もがき続けている。
こんな年になって初恋を拗らせているなんて、滑稽だ。
滑稽過ぎて、笑えもしない。告げることすら叶わず、かと言って忘れることも出来ずに燻らせ続け、諦めきれずに彼の背中を追い続けようとしているなんて。
辛いことが、沢山あった。けれどそれ以上に充実した日々を過ごした学び舎を見上げながら、彼の人を想う。
ようやく、ここまでこれた。私はあなたの隣に並べるような人に少しでもなれたでしょうか。
桜の舞う雄英敷地内をコツリ、コツリと音を立てながら進む足取りは重いけれど軽かった。