第34章 癒えぬ心を齧る傷
私の中で好き勝手に動くその時に繰り返した謝罪は何に対してだったのか。嫌がる私を無理矢理抱いたことか、避妊をせずに抱いたことか、私のことなど好きでもないのに性欲の発散に利用したことか。どれであっても到底許せるものでは無いし、最低だと思うのに。
そう、思うのに。けれど心のどこかで最低だと思いきれないのだ。もしも先生が自分と同じ気持ちなら許せると思ってしまうのだ。なんて馬鹿で都合のいい女だろうか。そんなふうに絆され続けて、きっとこの先また同じことを繰り返すだけだと、そう確かに思うのに。
──……俺が、嫌いか
どうしてあんなことを聞いたのか、気になって仕方が無い。どうしてあんなに悲痛な表情を浮かべていたのだろう。私が先生を嫌っていたら、先生は悲しいのだろうか。それとも、もう俺のことを好きではないのならこれを最後にするから、ということなのか。あの時確かに先生の瞳から一粒だけ零れ落ちた涙の意味が分からないまま。私が嫌いだと告げた後に、まるで喋るなと言わんばかりに噛み付くようなキスをしたのは。先生が、私のことを好きだから、だったらいいのにな、なんてありもしないことを願うみたいに考えた。