第34章 癒えぬ心を齧る傷
怖くて、痛くて、辛くて、苦しかった。先生をあんなに怖いと思ったのは初めてだった。まるで私の知らない男の人で、先生の皮を被った別人だったのではないかと思うくらいに。
けれど、あの日から一向に目を合わそうとしない先生を見てあれは先生の皮を被った別人でもなければ夢でも幻想でもない、紛れもない現実なのだと思い知らされて。正直、先生が怖くて堪らなくて私自身も必要以上に近寄りもしなければ目を合わそうともしなかったけれども。
先生から別れを告げられた日からはただの上司と部下、先輩と後輩、それ以上でも以下でもない関係に戻ったと思っていたのに。何が先生を焚き付けたのか全くわからなかった。やっぱりきっと、ただそこに都合のいい存在がいたから。欲を発散するのには都合のいい、自分を好いている女がそこにいたから。