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【ヒロアカ】許してね、ヒヤシンス【R18】

第32章 燻る残り火をどうか消して



 別れを告げたあの日から、また数ヶ月が経った。

 週刊誌というのはまぁどこから情報を得るのか、すぐに破局を聞きつけてやんややんやと騒ぐだけ騒いでまた次のネタへと移っていった。生徒たちも、最初こそ「どうして」だの「どっちが振ったの」だの煩かったが何にも答える気がない俺に気付いたのか数日で言わなくなった。

 付き合いの長いマイクにはどうやら俺が落ち込んで見えるようで──決して落ち込んでいないとは言わないが表には出さない自信があったのに─俺を気遣うように優しくしてきた。正直気持ち悪い。

 水分とは別れてからは以前の関係に戻ったように思う。マスコミが落ち着いて互いにまた自宅へと戻り、元教え子と教師、担任と副担任、つまりは上司と部下。たったそれだけの関係に戻ったのだ。ただ、この数ヶ月一度も酒は酌み交わしていない。当たり前のことだろうし、もし水分から誘ってくれるようなことがあったとしても、断るのだろう。そんなことがあれば俺はきっとまた同じことを繰り返すから。本当に酔うのか、酔ったふりをするのかはわからないが、どうあっても水分を抱こうと目論むのだろうから。

「相澤先生」

「ん、なんだ水分」

 交わす言葉の数は格段に減った。俺と話すたびに頬を染めていたのにな、なんて学生時代の水分に思いを馳せては自嘲する。あの時にこの気持ちに気付いていれば。いくら思ったところで時は巻き戻らないし、水分の気持ちがまた俺に向くこともないのに。
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