第31章 夢はいつも唐突に消える
どうするのが正解なんですか、そう聞いてみたくても聞けない私はそっと眠る先生に手を伸ばして。白いシーツに散らばる伸ばしっぱなしの黒髪に触れれば、閉じられていた瞳がそっと開かれた。
「…ん、おはよう、水分」
「おはよう、ございます、相澤先生」
何も身に着けていない身体を起こして私を手招くその姿に眩暈がする。だって、どうしてこうも優しい瞳で私を見るのか。その瞳で見られるたびに心が死んでいく。ああ、その瞳の裏側でなにを考えているの、なにをどうしたいの。
───どうして、こうなってしまったんだろう。
始まりは身体を重ねられる、ただそれだけで良かったのに。先生が覚えていなくても、先生が私のものにならなくても、ただ繋がることができれば。決して幸せにはなれなくとも、ただそれだけでいいと望んだのは私だったのに。浅ましく心を求める私は先生が囁く言葉を信じることもできなくなってしまった。
誘われるままに体を寄せれば、少し冷えた私の肌が先生の暖かい肌に触れて2人の温度差が溶けていく。こんな風に私も溶けてしまえたらどんなに幸せだろうか。こんな風に交わるように一つになれたら。私と先生の心の温度差も溶け合って分け合えたら。同じになってしまえばいいのに。