第29章 半透明に満ちて空っぽ(裏)
熱い指先が素肌を滑る。じわじわと侵食されるように体に広がっていく熱とは裏腹に、心は冷静だった。
酔っていない先生と繋がるのは、初めてだ。私に触れる指先はいつもよりも優しく、甘ったるさすら覚えるような触れ方で。まるで本当に愛している相手に触れるみたいなその指の感覚が悲しい。そう思うのに、先生に触れられる体はそんな心を無視して昂っていく。熱に侵されて、先生が動くその度に聞こえる衣擦れの音やベッドの軋む音ですらも私を高まらせる要因にしかならなくて。
「……っ、」
服の上から胸の頂を引っ掻かれる、下着と服に阻まれて決して強いとは言えない刺激でも反応して息が詰まった。
「乳首、弱い?」
「わかり、ません……っ」
「そうか」
少し意地悪く笑った先生に、するりとワンピースを脱がされれば空気に触れる面積が増えて軽く震えた体を大きな手のひらが撫ぜて、期待にぞわぞわと粟立った。
ブラジャーの隙間に指を差し込まれて膨らみが露わにされる。守るものが無くなった膨らみには既にぷっくりと勃ち上がった乳首が刺激を求めて主張していて、先生の熱い舌がそれを舐めた。
「っひゃ、ぁ……ん、っ!」
「ん、かわいい……」
訪れた刺激に抗わず声を上げれば口に含んだままそう呟いて笑う。
「そ、こでっ喋らない、で、っんん!」
「なんで?」
「わかってる、くせに……っ、いじ、わるぅ……ん」
上目がちに私を見ながらもそこから口を離すつもりのないらしい先生が更に続ける。
「水分が可愛いからね、つい」
「っな!なに、言って……、」
ようやく口を離した先生の手が背中に回ってホックを外される。少しずつ肩紐を下げて剥ぎ取る動きがゆっくりで、私の顔を伺いながら脱がせていく先生に羞恥で震えた。
「下着姿もそそるけど……、今日の服も」
「?」
「水分に似合ってたよ」
脱がせてから言うことでもないな、なんて苦笑気味に呟きながら微笑んでまた胸元へ唇を落とす。
服なんて、いや、私の事なんて見てないと思ってたのに。どうしてそんなこと言うの。デート中に私にかけた言葉だって私をからかっただけだと、私に素直に喜べない自分が憎い。けれどそれ以上に何も思っていない私に対してそんなことを口にする先生が、酷く憎らしく思えて仕方がなかった。