第28章 よすがもなにも、どこにも
「相澤先生、私、先生が好きです……あの時から、……いいえ、もっと前から。ずっと」
ずっと、ずっと言わせてもらえなかった言葉の先を紡げば「知ってる」と先生は笑った。全てをわかっていてその手を差し出す先生はなんて残酷なのだろう。そう思っていても、残酷だと恨めしく思ってみても、それでも私はその手を掴むのだ。
ああ、誰か、こんな私を嘲笑ってくれないか。とんだ馬鹿だと罵ってくれないか。
先生が私に差し出すその手は決して愛なんて生易しいものではなくて、ただの同情、いや、それよりももっと残酷なものだと理解しているのに。けれど名実ともに先生を手に入れられるのなら。それでいいのだと。まるで縋るようにその手を掴んだ私を、先生は優しく微笑んで見ていた。力を込めて握られた手を遠慮がちに握り返せば横の気配が笑った気がした。まるで私の心を嗤うみたいに。