第27章 音も無く忍び寄る終焉
「違う、……その、今日の水分が綺麗だと思って」
近くで見る水分の顔に先程の違和感が蘇った。いつもよりも色のある唇に化粧が違うのだと気が付いて、それも今日のためかと思うと浮き立つ心。同じくいつもよりも色のある頬がじわじわと朱に染まる様子に己の口から出た言葉を脳内で反芻する。何を言ってるんだ。
「か、か、かかからかったって何も面白くないですよ!?」
「からかったんじゃない」
素直にそう告げれば更に色濃く染まる頬。期待、しちまうだろ、その反応は。
「あれ、水分?……と相澤先生」
「カ、、カミナリサン……」
「ぶっは!水分なにその顔!何そんなガチガチに……ってもしかしてデート中でした?」
「チチチチチガウヨー!コレハ、ソノ、」
しどろもどろになって必死に弁解しようとするその姿に胸が痛む。なんでそんな必死なんだよ。
気が付けば水分を抱き締めていた。その様子を見た上鳴が露骨に眉根を寄せて俺を見るその様子に口を開く。
「そりゃ恋人同士だからね、デートくらいしたっておかしくないだろ」
「まあ、そうですけど」
「俺と水分がデートしてたら何か不都合でもあるのか」
「……ないですね」
俺の問いにそう答えてから、水分の頭に手を置いて耳元で何かを囁いて離れた。近過ぎるその距離にもやもやと黒い感情が溢れそうになるのを堪える。