第27章 音も無く忍び寄る終焉
「もしかして先生も何も考えてないとか?」
「…そうだよ」
首を傾げる俺をどうやら何も考えていなくて首を捻ったと思ったのだろう。いや、何も考えていないのは確かだからそうだと答える以外にはなかったのだが。
年上なのにとか男なのにとか誘っておいてなんだとか思われたって仕方ない。俺よりも遥かに余裕がある水分はこういった経験が他にあるのだろうか。知らない男と並んで歩く水分を想像してしまって胸に黒い感情が渦巻いてすぐにそれをかき消した。
「それじゃあ適当にぶらぶらしましょっか」
なんとも曖昧な提案を為した水分は「ずーっと雄英の敷地内に篭ってたし街が新鮮!」なんて言って今度は逆に俺の手を引いた。
どうやら呆れられてはいないようで少し安心した。俺の手を引いて先を歩く水分はいつもと違う装いで、もしかして俺のためにそんな風にしてくれたのかと思った。よくわからないがひらひらとした可愛らしい白に身を包む水分はヒーローでも教師でもないただの"水分癒依"という感じがして、そのどちらでもない姿を俺に見せてくれるのだということに心が騒ぐ。
「……あー、ごめんなさい、適当にとか時間の無駄にも程がありますね」
何も返さない俺が怒っていると思ったのか伺うようにこちらを振り返って口を開く水分の手を引いてその体を引き寄せる。