第27章 音も無く忍び寄る終焉
水分の手を引いて歩き出したはいいものの、どこへ行くかなんて考えてもいない。こんなことをするのは正直ほとんど初めてで、世間一般の男女がどこへ行って何をするかなど知る由もない。いや、デートたるものが何かということはわかるが、今の俺には水分を連れてどこへ行けばいいのかなど皆目検討もつかなかった。かといってあのままマイクに任せれば普通のそれとはかけ離れそうだという危惧と小馬鹿にされる未来が見えて即座に断わった。
「……水分はどこか行きたいところあるか」
「私ですか?……うーん、特には」
「そうか」
水分が行きたいところがあればそれでいいかと思ったが返ってきたのはそれを打ち砕く答え。もう既に先行きが怪しい。こんなことなら考えておくべきだった。渋々とはいえ水分が誘いに乗ってくれたことに浮かれていたなど。
いや、浮かれていたと言うよりもどうやって水分に想いを伝えるかで頭がいっぱいだった。
「先生は何かありますか?」
横に並んだ水分がこちらを見上げて首を傾げる。いつもと何かが違う気がして首を傾げれば、少し違和感のある顔がくつくつと笑う。