第1章 主夫①
掃除が終われば、次は買い物だ。
この地域は高級住宅街などと言われているが、少し歩けば下町の商店街があるし、大型スーパーだってある。
毎日買い物に行くと金はかかるが、にはいつだって美味いメシを食わせてやりたいから、なるべく上手にやりくりしながら新鮮な食材で料理している。
大型スーパーは便利だが、俺は商店街で買い物をする事のほうが多かった。
特に行きつけは、ザカリアス精肉店だ。
ここは夫婦二人で切り盛りしている、小さな肉屋だ。だが品揃えと品質は超一級で、この店で売っている肉で、ハズレたことなど今までに一度もない。
というのも、店主のミケは人間離れした嗅覚をしており、仕入れの際にはその嗅覚をフル活用しているから、悪い肉をつかまされる事が無いらしいのだ。
当然、店頭に出した肉もニオイで嗅ぎ分けているので、管理は完璧だ。
「いらっしゃい、リヴァイ」
威勢良く声をかけてきたのは、ミケの妻・ナナバだ。
美形だが、やや性別不詳なところがあり、実を言うと俺は最初男だと思っていた。
背が高く、スラリとした体型に、女に好まれそうな王子様顔をしている。声もどちらかといえばハスキーだ。
何度か店に通ううちに、店主の妻であることが分かり、本人に気づかれる前に認識を正しくできたことに、俺は心底安堵したものだった。