第1章 主夫①
「豚バラを頼む。今日は鍋にしたいんだ」
「あいよぉ!ミケ、豚バラお願い」
ニカッと笑ってナナバが視線を向けた先には、店主のミケの姿があり、すでに肉の並んだガラスケースの戸を開けていた。
「さっきがテレビに出ていたな。相変わらず忙しくしているのか?」
肉を包みながらミケが言う。
そんなにペラペラと話す男ではないのだが、ちょっとした雑談程度ならする。休日にはと一緒に買い物に来ることもあるので、面識はあるのだ。
「あぁ、昨日も帰りは遅かった。精のつくもんを食わせてやらねぇとな」
「相変わらず主夫の鏡だな、リヴァイ。だったら今度、メンチカツでも作ってやったらどうだ?ボリューム満点のやつをな」
「ほぅ、悪くない」
確かに、力が湧いてきそうなメニューだ。
は肉料理も好きだから、きっと喜ぶだろう。
というか、はほとんど好き嫌いをしない。唯一、毛虫のように嫌っているものと言えば、キウイフルーツだろうか。
「モジャモジャしている上に、ブツブツしてるなんて!」
と、いつだったかが鳥肌を立てていたことを思い出す。どうやらビジュアル的にダメらしい。
別に皮の部分は食わねぇんだから、そんなに気にすることもないと思うんだがな。
ブツブツだって、イチゴと大差ねぇ。イチゴは好きなくせに、不思議なことを言うものだ。