第1章 主夫①
朝食の後片付けが終わったら、家中の全ての部屋を掃除する。風呂、トイレ、洗面所の掃除も例外ではない。
この家は都会の閑静な住宅街の中に建っていて、設計はもちろん、一級建築士であるがやった。
さすがに「主婦が選ぶナンバーワン建築士」の異名を取るだけあって、の考える間取りは非常に効率的で無駄がない。これは、家事をする上でとても大切なことだ。
特に俺が気に入っているのはキッチンだ。
と言うのも、この家を建てるときは俺の希望を全て吸い上げてくれて、建築ルール上不可能でないものについては全部叶えてくれたからだ。
まさにここは俺の理想を詰め込んだ夢のキッチンだ。
子どものいない俺たちは、そんなに広い家に住む必要もない。
すぐ近くに相手を感じられるような、かと言って窮屈でもない絶妙な距離感で設計されたこの家は、こじんまりとした平屋だ。
だから、家中の掃除をすると言っても、そんなに大したことではない。