第2章 主夫②
「お、おい何言ってんだよ、お前!」
女の放つ異常な怒気に、エレンと呼ばれた男は少し慌てた様子を見せた。
それにしてもこのむき出しの敵意は一体何だ。こいつとは初対面のはずだが。
「さっき…あなたがエレンに暴力を振るっているところを見ました。本当にあなた、さんのご主人ですか…?」
なるほどそういう事かと、俺は合点がいった。つまりコイツはエレンの馴染みということか。それにしてもこの俺に向かってこんな目を向けるなんざ、こいつ肝が座ってやがるな。
じっとお互いにらみ合ったまま立ち尽くす。隙を見せればこいつは躊躇なくやるだろう。初対面だが、目を見れば分かる。
「どうぞお掛けください。コーヒーをお持ちしましたので」
ギラギラと、まるで今にも飛びかかってきそうな目をしてミカサが言う。とても「お茶を持ってきた女子社員」には見えない。どこからどう見ても殺し屋だ。
「弁当を渡したらすぐに帰る。俺の事は気にしなくていい」
俺は慎重に距離を取って、ミカサの動きを警戒した。こいつは今、俺の天敵であるコーヒーを持っていやがる。あんな物を飲んだら、欝になるからな。