第2章 主夫②
「このお部屋でお待ちください。今お茶をお持ちしますから…」
そう言って部屋から出ていこうとするそいつを、俺は呼び止めた。
「いや…気を使わなくていい。に弁当を渡したら俺は帰る」
ビクリと肩が揺れたので、さっきの手刀が思った以上に効いたらしいことが分かった。カタギのモンには、少々荒療治過ぎたか。
「い、いえっ、そういう訳には…お茶も出さないなんて失礼が知れたら、叱られてしまうので…」
そんなやり取りをしているうちに、コンコンと扉をノックする音が聞こえ、盆にコーヒーを乗せた女が入ってきた。
黒髪を肩より少し上くらいで切った、背の高い女だ。色は白いし、顔立ちも整っている。一般的に言って美人だと思う。
だが、その目つきは普通じゃない。
(ほう…こいつもいい面構えだ。こんな視線を向けられたのは、しばらくぶりだな)
「ミカサ!」
「エレン、ここは私に任せて、下がって」
目玉の大きな男にそう言って、まるでかばうようにしてミカサと呼ばれた女は俺を睨みつける。