第2章 主夫②
そいつはチラリと俺を見たが、すぐに視線を外すと、ギョロギョロと目を動かしながら俺の横を通り過ぎていった。そして辺りをウロウロと歩き回り始めた。誰かを探しているのだろうか。
俺は、が寄越してくれると言っていた会社の人間を待って、じっとその場に立ち続けた。
そんな風にして、直立不動の俺の周辺を目玉のデカイ男がぐるぐると歩き回っているという不思議な光景が少しの間続いた。
その間、俺は朝のの様子を思い浮かべていた。
は今日も忙しそうだ。帰りは何時頃になるのだろう。夕飯は何にしよう。今日は特に朝も早かったし、の好物をたくさん作って、疲れが明日に残らねぇよう元気をつけてやらねぇとな。
そんな事を考えていると、いつの間にか目玉のデカイ男が目の前に立っていた。見下ろされるような形になって、あまり気分は良くない。
…チッ、ガキのくせに図体ばっかりでかくなりやがって。
「あの…もしかして、さんのお弁当を届けに来たのって…」
「あ?俺だが。お前がさっきから探していたのは俺のことか?」
「えぇえぇぇ!!そんなっ、だって旦那さんが届けに来るって言ってましたけど!!?」
「うるせぇ。俺がの夫だ。何か文句あるのか?」
「いや、文句って言うか、だってまんまヤク…」
何なんだコイツは。俺みてぇな人間が言えたことじゃねぇが、一体どういう神経してやがる。それに何よりもうるさくてかなわねぇ。