第2章 主夫②
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の職場は、俺達の住む町から電車で3駅ほど行った先にある。割と近い。
設計事務所らしく洗練されたデザインの白い建物は、遠目からでもよく目立った。
向かう道中、通行人がチラリチラリと俺のことを見るが、これは今に始まったことではない。外出すると大抵こういう視線を受ける事になる。
原因は分かっている。おそらく俺のこの服装のせいだ。
俺は今、黒のスーツに身を包み、銀色のアタッシュケースを抱えている。ケースの中身はもちろんの弁当だ。これはあらゆる衝撃を吸収してくれるので、弁当が崩れる心配もない。もちろん防弾仕様だ。
服はヤクザ時代に着ていたもので、何となくズルズルと着続けてしまっている。別に服を買い換える金がねぇ訳ではなかったが、何となく、長年のスタイルから抜け出せないでいる。何というか、これが一番しっくりくるんだ。
それに、別に変じゃねぇだろう。黒いスーツなんてサラリーマンだって着ているし、俺は顔に傷がある訳でもねぇ。刺青だって背中にしか入ってねぇから、シャツの胸元からチラリと覗くこともない。
だから、自分としては十分一般人に溶け込んでいると思っているんだがな。