第1章 主夫①
夜の9時を回った頃に、ピンポーンと玄関の呼び鈴が鳴った。俺は玄関まですっ飛んで行って扉を開ける。
「ただいま、リヴァイさん」
そこには、仕事道具を抱えたがニコニコしながら立っていた。その顔を見れば分かる。今日も、一日楽しく仕事が出来たんだろうってことが。
「おかえり。今日は少し早かったんだな。さっさとうがい手洗いをしてこい。メシにするぞ」
「はーい」
が抱えていた仕事道具は俺が持ってやって、洗面所に向かうの後を追う。
毎日思うことだが、怪我もせずに無事に帰ってきてくれて良かった。今日も仕事お疲れ様、だ。
温め直した食事を、ダイニングテーブルに並べていく。
「きゃああぁ!リヴァイさんっ、これっ!」
洗面所から戻ってきたが、感嘆の声をあげながら、口元を両手で押さえた。
もともと大きな目がさらに大きく開かれて、まるでビー玉みたいにキラキラと輝いている。
がきゃあきゃあと歓声を上げながら写真を撮りまくっている視線の先には、俺が作ったシロクマ鍋があった。
赤い鍋の中央にデンと構えたシロクマは、自分で作っておいて何だが、少しふてぶてしい顔をしている。まるで風呂に浸かっているオヤジみてぇだ。
「可愛いっ!すごい可愛いっ!これっ、リヴァイさんが作ったんですよねっ?!リヴァイさん可愛いっ!どんな顔して作ってたのかとか想像しただけで萌える!ウケる!」
「おい、可愛いのか、萌えるのか、ウケるのか、どれかにしろ」
「リヴァイさん、大好きっ」
「……オイオイオイ、いきなり照れるだろうが…」
まるで負ぶさるようにして後ろから抱きついてきたの頭をポンポンと軽く撫でる。
が後ろにいて良かった。今の俺の顔は、正面からはとても見せられたもんじゃねぇからな。