第1章 主夫①
そんな風にして商店街で必要な食材を揃えたら、家に帰って夕飯の下ごしらえをする。
だがその前に昼飯だ。俺の昼飯は、の弁当に詰めたものの残りで済ませている。
が喜んで食べてくれるから料理だって頑張っているが、自分しか食べない時にはどうもやる気が出ない。
それに、と同じものを食べながら、あいつも今頃昼メシだろうかと想像するのも楽しいのだった。
そんな事を考えていると、ピロン、と携帯の着信音が鳴って、メッセージが届いたことを教えてくれる。からだった。
「今お昼食べてます。厚焼き玉子美味しい!」
短い文章だが、添えられたイラストスタンプがの表情を彷彿とさせて、俺は嬉しくなる。
よかった、と送って、既読になったのを確認してから俺は携帯を閉じた。
やる気が出てきた。さっさと食って、夕飯の準備に取りかかろう。
今日の夕飯は、が可愛いと騒いでいたシロクマ鍋だ。
その名の通り、鍋の真ん中には大根おろしで作ったシロクマが鎮座している。まるで風呂にでも入っているかのような、男の俺でも思わず和んでしまう鍋である。
とりあえず、シロクマを今作ってしまうと水分を吸って崩れてしまうだろうから(多分、が帰ってくるころまでには、ただのみぞれ鍋になるだろう)、とりあえず豚バラと白菜を交互に重ねたものを鍋に敷き詰めて煮ることにする。
が帰ってきてから温め直して、シロクマを形成してやりゃあいい。
味噌汁を作って、炊飯器のタイマーをセットすれば、あらかた夕飯の準備は完了だ。