第16章 渦巻く黒い感情
朝食の片付けを終えたゆうきは、足取り軽くある場所に向かっていた。
コンコンと扉を叩く。
「雷蔵くん、いる?」
雷「ゆうきちゃん?どうぞ〜」
戸を開けると、自室で本を読んでいる雷蔵がいた。
「お休みの日もお勉強?偉いね〜」
雷「そんなんじゃないんだけど、特にやることもなくてね」
そう言って雷蔵は微笑んだ。
雷「ところでどうしたの?僕らの部屋に来るなんて珍しいね。」
「あ、実はね食堂のおばちゃんにお饅頭をいただいたの!6つもいただいたから、五年生と分けたら私の分と合わせて丁度いいでしょ?い組と八くんにはもう渡して来たから、ここが最後なの!」
そう言ってゆうきが見せた包み紙には饅頭が残り3つ入っていた。
雷「じゃあゆうきちゃんも一緒にここで食べない?」
雷蔵の問いかけにゆうきは慌てたように手を振る。
「あ、いや〜このあと用事があって…、私は後で食べるから大丈夫!」
ゆうきは自分の分の饅頭を手に取ると、2つの饅頭が乗った包みを雷蔵に押し付ける。
「じゃあ、これ鉢屋くんと食べてね!」
それじゃと言って立ち上がり出て行こうとすると、戸がひとりでに開いた。
鉢「別にここで喰えばいいだろ。」
そこにはこの部屋のもう1人の家主が立っていた。
「あ…私、その…用事があって…」
鉢「ふ〜ん、今日は吉野先生も休暇を取っていらっしゃらないのに、何の用事があるんだ?」
「えっと…その…」
雷「もう!三郎!ゆうきちゃんをいじめないの!」
鉢「用事なんてないんだろ?こいつが早くこの部屋を出たい理由は私と顔を合わせたくないだけさ」
そう言うと三郎はゆうきが持っていた饅頭を奪い、自身の口に含んだ。
雷「三郎がそんな態度だから当たり前だろ!」
雷蔵に叱られ軽く舌打ちをすると、三郎は部屋の中に腰を下ろした。
雷「ゆうきちゃん、よかったら一緒に食べない?」
雷蔵にそう言われ、ゆうきは三郎を横目で気にしつつ、2人と膝を突き合わすように座った。