第14章 保健委員会
「えっと…この時代からそう遠くない未来で、蘭学という西洋の学問を勉強する人が増えるの。その中に医学もあって、日本でもどんどん西洋の医療技術を採用するようになったみたい。病院という怪我や病気の治療をする場所ができたり、外科手術が行われるようになったり、新しい薬が作られたりね。そして、科学の目覚ましい発展に伴って医療技術も進歩していったの。不治の病と言われていた病気が治る病気になったり…、この500年で助かる命がかなり増えたのは確実でしょうね。それでも今なお医療技術は発展していっているんだよ。」
ゆうきの話を全員が真剣に聞いていた。
乱「うわぁ、すごいなー!ワクワクしますね!」
鶴「ゆうきさんはいい時代に生まれたんですね〜。エキサイティング〜。」
左「…全然よくない!!」
急に声を荒げた左近に驚き、その場にいた全員が左近を見つめる。
左「こいつの話が本当なら、こいつはきっと僕たち保健委員を馬鹿にしているんだ!」
数「ちょ…左近!ゆうきさんに失礼だろ!」
数馬が慌てて止めに入った。
左「先輩は悔しくないんですか?そんなにすごい薬や技術があるなんて…僕たちがやってることは無駄なんだ!」
「そんなこと!現に私は伊作君から手当を受けて、皆に親切にされて本当に感謝してるよ!」
左「その手当だって貴女の時代ではもっとすごい薬があるんじゃないですか?僕たちが一生懸命薬草を摘んで煎じたものより効くものが!」
左近は涙目でゆうきを睨んだ。
「それは…私は専門家じゃないから分からない…。でも貴方達がやっていることが未来の医療に繋がっていて…。」
左「ほら、やっぱり僕らを馬鹿にしている!」
左近の両隣にいた伊作と数馬が左近を落ち着かせるように宥める。
左近は伊作の胸に顔を埋め、涙を押し殺す。そんな後輩の背中を数馬が撫でる。
その様子を2人の一年生が心配そうに眺めている。ゆうきは居たたまれなくなり、自分の発言を悔いた。
善「左近、落ち着いて…。保健委員会のこと、君がそこまで思っていてくれて嬉しいよ。」
左近は伊作の胸から顔を上げて、ゆうきを見据えた。
左「…先輩、僕はその人が間者かどうかなんてどうでもいいんです。それより500年後の未来から来たということが事実なら、僕はその人のことが嫌いです。」