第12章 落とし穴
ゆうきの質問には答えず、喜八郎は話を進めた。
綾「穴掘り小僧と呼ばれるトラパーが忍術学園にいること、学園の外でも結構知られてるんです。」
「…!凄いんですねぇ、綾部君!」
喜八郎は落とし穴の壁に持っていた手鋤を立てかけた。
綾「そして、僕が掘った蛸壺からはプロの忍者でも脱出するのは難しい。それもこれまで戦ってきた敵や、共闘した味方の城、忍者の中では有名らしいです。」
「へー!!…でもだからって学園の敷地内に掘らなくても」
綾「まぁ皆には迷惑がられてますけど、侵入者を捕まえるのに結構役に立ってるんですよ。」
「そうなんだぁ。綾部君は優秀な忍者になれますね!」
綾「…貴女はポンコツ?それともポンコツのふりした優秀なくノ一?」
「?」
喜八郎の問いにゆうきは目を丸めてキョトンとする。喜八郎は無言のままゆうきとの距離を詰めた。
「綾部君??」
表情が乏しい喜八郎が何を考えているか分からないが、何となく不安に思ったゆうきは後ずさりした。しかし、狭い落とし穴の中、すぐに冷たい土壁がゆうきの背中に当たる。
ドンッ
喜八郎は両手を土壁につけると、自分より少しだけ身長の低いゆうきにずいっと顔を近づけた。
「ど、どうしたの!?」
綺麗な顔が目の前に迫り、13歳の子ども相手なのにゆうきは鼓動が早くなっているのを感じた。
綾「ゆうきさん、この蛸壺は『プロの忍者でも脱出できない』なんて難しい作りじゃないんです。」
「…??」