第12章 落とし穴
「誰か…誰かいませんかー!助けてくださいー!」
落とし穴にはまって30分程経つが、一向に誰も通りかからない。ゆうきが焦り始めた時、1人の忍たまが顔をのぞかせた。
綾「おやまぁ。」
「!! 貴方は確か…四年生の綾部君…?」
綾「はい、綾部喜八郎です。覚えててくれたんですねー、ゆうきさん。」
目立つ人物が多い四年生はゆうきの印象に残りやすかったのだ。その中でも人形のような可愛らしい顔立ちの喜八郎は、すぐに覚えることができた。
「綾部君、見ての通り落とし穴にはまってしまって、出られないんです。助けてくれませんか?」
綾「それは災難でしたねぇ。僕の作ったターコちゃんからはなかなか出られないからねぇ。」
「ターコちゃん…?え、貴方がこの落とし穴作ったの!?」
綾「そうです、蛸壺のターコちゃん。穴掘りは僕の趣味ですー。」
そう言って喜八郎は持っていた手鋤をゆうきに見せる。
(不思議ちゃん…。)
のらりくらりと質問に答えた喜八郎は、手鋤を持ったままひらりと穴に飛び降りた。
「え!?なんで貴方まで穴に!?これじゃ2人とも出られないじゃない…」
綾「貴女、本当は出られるでしょう?ゆうきさん。」
「へ??? どういうこと?」
喜八郎の言う意図が分からず、ゆうきは首をかしげた。