第10章 洗礼
六年生の忍たま数名は、前方の真ん中の机に着席した。もう食堂にはこの六年と五年の生徒達しか残っていなかった。
久「…あの先輩達なんか嫌な感じだよな。」
鉢「最近荒れてるみたいだな…どうせ六年になって教科も実技も遅れをとって落ちこぼれでもしたんだろ。」
雷「あ、僕木下先生から授業で使う忍器を取りに来るよう言われてたんだった。先に行くね!」
雷蔵が盆を持って席を立ち、六年生に食事を出し終えて戻ってくるゆうきに声をかける。
雷「ゆうきちゃん、ここ置いとくね!」
「はーい、ありがとう!」
その時、一番端に座っていた六年の忍たまが、さっと足を出した。
「キャッ!!!」
急いでいたゆうきは見事にひっかかり、勢いよく転びそうになる。ゆうきは衝撃に備えて目をつぶったが、その衝撃はやって来なかった。不思議に思い、そろりと目を開けると力強い胸板と腕に支えられていた。
雷「…大丈夫?」
「う、うん、ありがとう。」
雷蔵はゆっくりゆうきを立たせると、六年生に近づいていく。
鉢「おい、雷蔵!よせって。」
モブ1「何だよ?五年が何か用か?」
雷「先輩、今彼女をわざと足で引っ掛けましたね。」
モブ2「はぁ?生意気だなお前。んなわけないだろ。」
モブ3「五年はくせ者女に加担してるって噂流してやろうぜー。」
雷「学園長先生がくせ者ではないと認められたのです。彼女が本当に間者ではなかった場合、先輩方は一般人に怪我をさせることになりますが?」
「ら、雷蔵くん…!」
一触即発の雰囲気に、五年の他のメンバーまでもが援護するように雷蔵の後ろに立ち、ゆうきはオロオロするばかりであった。
モブ1「知らねえよ。今引っかかったのだって演技かもしれねぇぜ。」
モブ2「そうだよ、咄嗟にひらりとよけたらくノ一ってバレるからな。わざと引っかかったんだろ?なぁ、女。」
六年のモブ集団はニヤニヤと馬鹿にしたような目つきでゆうきを見た。
「っ……そんな…。」